2022年11月、東京都中野区の私立中学校「宝仙学園順天堂大学系属理数インター中学校」で凄惨ないじめ事件が発生しました。修学旅行中に、中学3年生の男子生徒が複数の同級生から自慰行為を強要され、その様子を動画撮影されるという衝撃的な出来事でした。
この事件は、被害者の心に深い傷を負わせただけでなく、学校の対応や私立学校のいじめ問題における課題も浮き彫りにしました。
本記事では、いじめ加害者の特定状況や事件の詳細、被害者のその後、そして学校側の対応について詳しく調査しています。さらに、私立学校のいじめ問題における課題と今後の対策についても考察を加えています。
- 宝仙学園中学校で起きた凄惨ないじめ事件の詳細と経緯
- いじめ加害者の特定状況と警察の対応
- 被害者Aくんのその後と心的影響
- 私立学校のいじめ問題における課題と今後の対策
宝仙学園で起きた凄惨ないじめ事件の概要
2022年11月、東京都中野区にある私立中学校「宝仙学園順天堂大学系属理数インター中学校」の修学旅行中に、当時中学3年生だった男子生徒Aくんが複数の同級生から自慰行為を強要され、その様子を動画撮影されるという凄惨ないじめ事件が発生しました。
被害者Aくんの入学から被害が始まるまで
Aくんは2020年春に宝仙学園中学校に入学しましたが、中学2年生の6月頃から複数の男子生徒からいじめを受け始めたと証言しています。
- 持ち物の隠匿: 筆箱や体操着などのAくんの持ち物が何度も紛失する
- 暴力行為: 階段から突き落とされそうになったり、殴られてアザができたりした
- 性的な嫌がらせ: 局部を蹴られ、保健室に行くほどの痛みを感じた
いじめの理由は、加害者の男子生徒の一人が気になっている女子とAくんが仲が良かったことが原因だったようです。
Aくんは先生に何度も相談しましたが、満足のいく対応はしてもらえませんでした。
Aくんの母親が2022年6月に担任にメールを送りましたが、返信はありませんでした。
修学旅行での自慰行為強要と動画拡散事件
いじめはエスカレートし、2022年11月の沖縄への修学旅行中、Aくんは複数の男子生徒から自慰行為を強要されました。
Aくんが断ろうとしても聞き入れてもらえず、周囲から「手、止めんなや!」「学校でライブ配信したらおもろいね」などと囃し立てられる中、ベッドの上で自慰行為をさせられ、その様子を動画撮影されてしまいました。
この動画は後に学校内で拡散され、Aくんが把握しているだけでも数十人の生徒が視聴する事態となりました。
女子生徒の目にも触れてしまったようです。
学校側の不適切な対応と別室指導
動画の存在は教師の知るところとなりましたが、学校側の対応は不適切なものでした。
- いじめではなく「Aくんの問題行動」と認識: 学校側は事態をいじめではなく、Aくんの問題行動として捉えている様子だった
- 約2か月間の別室指導: 2022年11月下旬から約2か月間、Aくんのみを別室で指導
- 誓約書の強要: Aくんにトラブルの原因があるかのような内容の誓約書を書かされる
修学旅行後、Aくんの父親と学校側が話し合いを行いましたが、学校の対応に変化はありませんでした。
むしろ、Aくんは別室指導によって精神的に追い詰められ、遺書を書くほどの状態に陥ってしまったのです。
いじめ加害者に関する情報
- 複数の男子生徒が関与か?特定状況を調査
- 警察への被害届と書類送検された生徒
- LINEを通じた加害者からの謝罪
複数の男子生徒が関与か?名前や顔などの特定状況を調査
この凄惨ないじめ事件には、複数の男子生徒が加害者として関与していたとみられています。
しかし、現時点では加害者の具体的な名前や人数は明らかになっていません。
Aくんの証言によると、修学旅行での自慰行為強要には複数の男子生徒が関わっており、日頃のいじめにも複数の加害者がいたようです。
ただし、それぞれの加害行為に関与した生徒の特定には至っていないのが現状です。
警察への被害届と書類送検された生徒
Aくんが宝仙学園中学校を卒業したタイミングで、Aくん一家は自慰行為動画の撮影・拡散について警察に被害届を提出しました。
その結果、動画を撮影した生徒1人が書類送検されることになりました。
ただし、動画の証拠は既に消去されていたため、この生徒は不起訴処分になったとのことです。
加害者の特定や処罰の面では物足りない結果となってしまいました。
LINEを通じた加害者からの謝罪
警察への被害届提出後、加害者の男子生徒の一部からLINEを通じてAくんに謝罪のメッセージが送られてきました。
- 謝罪の事実: 加害者からAくんに対してLINEで謝罪があったことが判明
- 一部の加害者のみ: ただし、謝罪をしたのは一部の加害者だけで、全員ではない
- 誠意ある謝罪とは言えない: LINEでの謝罪は手軽だが、直接会っての謝罪ではない点で誠意が感じられない
LINEによる謝罪は加害者の反省の表れと見ることもできますが、直接会って謝罪する勇気がなかったと捉えることもできるでしょう。
被害の大きさに見合った誠意ある謝罪とは言い難いように思われます。
被害者Aくんのその後と心的影響
- PTSDの診断と別の高校への進学
- 「同じ思いをする子を出さないで」という願い
PTSDの診断と別の高校への進学
Aくんはこのいじめ事件によって大きな心の傷を負いました。
2023年11月には心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、精神的な苦痛が続いています。
2023年1月7日、学校側からAくんに外部の高校を受験するよう勧められました。
結局、Aくんは宝仙学園ではなく、別の高校に進学せざるを得なくなったのです。
いじめの後遺症に苦しみながらも、新しい環境で学業に励んでいるAくんの心中は察するに余りあるものがあります。
「同じ思いをする子を出さないで」という願い
Aくんは取材に対し、「僕のような思いをする子どもがもう出ないようにしてほしい」と真摯な表情で語っています。
- 二度と同じ被害者を出さないで: Aくんはこの先、自分と同じような被害に遭う子供が出ないことを願っている
- 学校への不信感: 学校がいじめ被害者を守れなかったことへの失望感がある
- 社会への問題提起: 個人の訴えを社会全体の問題として捉えてほしいというメッセージ性がある
Aくんのこの言葉は、いじめ被害者の心の叫びであり、学校という場で子供の安全が守られなかったことへの疑問でもあります。
二度とこのような事件を起こさせないために、私たち大人ができることは何かを考えさせられる重い言葉だと感じます。
宝仙学園の対応と学校の特徴
- 東京都私学部介入後の動きと封書送付
- 宝仙学園の偏差値と学校としての位置づけ
東京都私学部介入後の動きと封書送付
Aくんへのいじめに対する宝仙学園の対応は後手に回ったままでしたが、2024年5月、東京都私学部が動いたことで学校側にも変化が見られるようになりました。
Aくん一家に宝仙学園から封書が送られてきたのです。
- 東京都私学部の介入: いじめ問題に対する宝仙学園の不適切な対応を受けて、東京都私学部が動いた
- 封書の送付: 2024年5月、宝仙学園からAくん一家に封書が届く
- 事態の進展: 外部からの圧力によって、宝仙学園の対応にわずかな前進が見られた形
東京都私学部の介入がなければ、このわずかな動きさえなかったかもしれません。
学校の自浄能力の低さと、外部からの監視の必要性を感じさせる出来事だと言えるでしょう。
宝仙学園の偏差値と学校としての位置づけ
宝仙学園中学校は四谷大塚が2024年2月1日に発表した偏差値で42-43とされており、中学受験業界ではボリュームゾーンの下位層に位置づけられています。
- 偏差値42-43: 宝仙学園中学校の偏差値は四谷大塚調べで42-43(2024年2月1日時点)
- ボリュームゾーンの下位層: 難関校ではなく、中学受験の主戦場より少し下のレベルの学校
- 教育レベルと学校運営: 必ずしも偏差値の高低がいじめ防止の良し悪しに直結するわけではない
教育水準としては中堅どころであり、進学実績を誇るような超難関校ではありません。
しかし学校の序列と、いじめ防止や生徒指導の質が比例するわけではないはずです。
むしろ中堅校だからこそ、手厚い生徒指導を行い、一人一人に目が行き届く教育体制が求められるはずです。
私立学校のいじめ問題における課題
- 隠蔽体質と不十分な対応の問題点
- いじめ被害者を守るための今後の対策
隠蔽体質と不十分な対応の問題点
宝仙学園中学校のいじめ事件は、私立学校特有の課題を浮き彫りにしました。
私立学校は公立以上に外部への情報公開に消極的で、いじめを隠蔽しようとする傾向が強いと指摘されています。
- いじめの存在を認めたがらない: いじめの存在自体が学校の管理能力の低さを意味するため、認めたがらない
- 自浄能力の欠如: 外部からの指摘がないと問題に取り組まない体質がある
- ブラックボックス化: 私立学校の内部事情は外から見えにくく、問題が表面化しにくい
私立学校を監督する仕組みの脆弱さも、こうした問題の背景にあります。
学校法人のガバナンスが効きにくい現状では、いじめ問題に限らず様々な不祥事のリスクがあると言えるでしょう。
いじめ被害者を守るための今後の対策
最後に、宝仙学園中学校のいじめ事件を教訓として、今後のいじめ対策について私見を述べたいと思います。
- 学校の透明性確保: 外部から学校運営の実態が見えるよう、情報公開を積極的に
- 相談窓口の充実: 生徒や保護者が安心して相談できる窓口を校内外に複数用意する
- 教職員への研修強化: いじめの兆候に早期に気づける目を養うため、教職員研修を強化する
- 警察との連携強化: 犯罪行為につながるいじめは早期に警察に相談できる体制を整える
- カウンセラーの配置: 被害者の心のケアができるよう、専門カウンセラーを校内に配置する
一つ一つは地道な取り組みですが、学校全体でいじめ撲滅への意識を高め、組織的な対応力を上げていく必要があります。
私立学校の自治を尊重しつつ、社会の目も光らせていくことが求められていると感じています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まとめ:宝仙学園いじめ事件の実態と課題について
- 2022年11月、宝仙学園中学校で凄惨ないじめ事件が発生
- 被害者は自慰行為を強要され、動画撮影された
- 動画は学校内で拡散され、数十人が視聴
- 学校側は事態を「被害者の問題行動」と誤認
- 被害者は約2か月間の別室指導を受けた
- 被害者はPTSDと診断され、別の高校に進学
- 加害者の具体的な名前や人数は明らかになっていない
- 動画撮影者1人が書類送検されたが不起訴処分
- 一部加害者からLINEで謝罪があったが誠意は不十分
- 宝仙学園の偏差値は42-43で中学受験ボリュームゾーン下位
- 私立学校のいじめ隠蔽体質と監督体制の脆弱さが露呈
- 学校の透明性確保や警察との連携強化などの対策が必要
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